Ⅲ-1 配偶者への居住用不動産贈与に関する民法改正
相続税法では配偶者の優遇措置として婚姻期間が20年以上の夫婦の間で、居住用不動産又は、居住用不動産を取得するための金銭の贈与が行われた場合、基礎控除110万円のほかに最高2000万円まで控除(配偶者控除)できます。
改正前の相続法では、このような居住用不動産の贈与についても「配偶者の特別受益」となり相続時の具体的相続分の計算上は贈与でもらった受益済み分として遺産分割が行われることになっていました。
しかし改正後は、配偶者保護の観点から、婚姻期間20年以上の夫婦間の居住用不動産の贈与については「持戻し免除の意思表示」があったものと推定する規定を置くことにより、「持戻しをするように」と言った被相続人の別段の意思表示が無ければ相続分の前渡しとして持戻しを考慮しなくてよいことになりました。
Ⅲ-2 配偶者の居住継続を保護する制度
相続財産に閉める自宅、建物の価値の比重が高い場合、配偶者が自宅に継続して居住するために、預貯金などの分配を受けられない可能性があり、その後の生活に支障が出るケースがあります。これに対応するために民法改正で配偶者居住権制度が創設されました。
①配偶者短期居住権制度の創設
配偶者短期居住権とは相続開始時に被相続人の持ち家に無償で住んでいた配偶者は、一定期間(最低でも6ヶ月)その家の居住部分を無償で使用することができるとする権利のことです。
遺言のない場合の法定相続では、相続が発生した場合不動産の相続財産は遺産分割が完了するまで、相続人全員の共有財産となります。そのため、特定の相続人《妻など》が移住を続けるには、その間の使用料などを支払わなければならないと言う主張が出てくる可能性があります。
このような問題に対処するために法改正がなされ、配偶者短期居住権という制度が創設されました。この配偶者短期居住権制度は令和2年4月1日から施行されています。(この配偶者短期居住権に対しては、遺産分割と動じに消滅するため相続税はかかりません)
②配偶者居住権制度の創設
配偶者が相続開始時に被相続人所有の建物に居住していた場合に、配偶者は遺産分割において配偶者居住権を取得することにより、終身又は一定期間、その建物に無償で居住することができるようになりました。
建物を居住権と負担の付いた所有権に分けることにより、それぞれの権利の価値を低く設定し、配偶者は居住を継続した上で居住用不動産の価値が低くなった分預貯金などを受け取ることが可能になるというわけです。
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